山を抜けるたびに、色が残った木々がふっと視界に現れる。冬に向かう耶馬溪は、紅葉の余韻をまとった静かな谷だった。温泉に入り、山を抜けて谷へ。途中でコーヒーを飲んだり、串を買ったり、景色を眺めながら歩いたりと、寄り道ばかりの一日。冬の気配の中に少しだけ残った紅葉が、走るたびにふっと視界に現れる旅だった。



杵築市山香でバンライフレンタカーに乗り換え、旅の最初に向かったのは「もみじの湯」。敷地に広がる紅葉が光に透けて、湯気と混ざり合う景色がきれいだった。泉質はやわらかくて、体の緊張がゆっくりほどけていく。このあと山道に入る前の、ちょうどいいウォームアップのような温泉時間だった。
もみじの湯
・住所:大分県中津市耶馬溪町深耶馬2941
・営業時間:11:00〜18:00
・料金:大人510円、小人300円
・定休日:水曜日
・情報:https://www.city-nakatsu.jp/doc/2020072200014/




もみじの湯から車を走らせ、山を一本抜けたところで見えてくる「豆岳珈琲」。大きなイチョウの木と山小屋のような店構えが、静かな存在感を放っている。店内はゆったりした空気が流れていて、香ばしい珈琲と甘いケーキが体に染みわたる。大分に引っ越してくる前から噂にきいていて、一度寄りたいとおもっていたお店だ。スタッフの方と世間話をしながらゆったりと過ごす。
豆岳珈琲
・住所:大分県中津市耶馬溪町大字大島3818-1
・営業時間:12:00〜17:00
・定休日:月曜・火曜定休
・情報:https://www.mametake.com/
3.ロードサイドのからあげ屋



豆岳をあとにして耶馬溪へ向かう途中、ふらっと立ち寄った小さなからあげ屋「くりちゃん」。おじちゃんが一人で切り盛りしていて、名物の肝串は驚くほどのおいしさ。素朴な味とあたたかい雰囲気に惹かれて、つい寄り道したくなるお店だった。
からあげ くりちゃん
・住所:大分県中津市耶馬溪町大字戸原20−4
・営業時間:11:00-18:30
・定休日:不定休
4.岩壁が迫る、青の洞門






耶馬溪を代表する景勝地「青の洞門」。江戸時代に禅海和尚が30年かけて手掘りした歴史あるトンネル。禅海は諸国巡礼の途中で、鎖渡りでの人馬の遭難を見て人々を救うため、托鉢で資金を集め、30年もの歳月をかけてノミと槌だけで手彫りしたのだそう。断崖が続く道は歩いて景色楽しむことができ、水の流れる音が谷に響いて静かに心地いい。この日は工事中で奥まで行けなかったけれど、行けるところまで歩くだけでも、十分に迫力を感じられる。近くには甘味所があり、団子とコーヒーを買い車内で食べながら景色を眺めた。
青の洞門(本耶馬渓)
・住所:大分県中津市本耶馬溪町曽木
・開放時間:24時間
・料金:無料
・備考:歩道は工事期間により通行制限あり。
5.白い木造建築が残る「旧平田郵便局」


青の洞門からほど近くにある大正時代に建てられた建物「旧平田郵便局」。白い木造建築がきれいに残っていて、レトロ建築好きにはたまらない外観。この日は休みだったが、耶馬溪で活動する作家たちの手でシェアアトリエとして管理されており、館内が開いていればギャラリーやイベントスペースとして使われる日もある。
Re-public Atelier 旧平田郵便局
・住所:大分県中津市耶馬溪町大字平田1387-5
・営業時間:イベント・オープン日のみ開放
・休館日:不定(要HP確認)
・情報:https://oldhiratapost.com/
6.八面山麓に広がる、水と庭園の風景「渓石園」



耶馬溪の奥へ進む途中にある日本庭園「渓石園」。池のまわりを木々が囲み、水面に紅葉が映り込む静かな場所。芝生の広場や東屋があり、歩くだけで気分がゆっくり整う。ダイナミックな自然の中に、人の手で丁寧に守られた静けさがある庭園だった。
渓石園(けいせきえん)
・住所:大分県中津市耶馬溪町大字大島2286−1
・営業時間:終日
・料金:無料
・情報:https://www.city-nakatsu.jp/doc/2013100900048/
7.谷を象徴する石橋「耶馬溪橋」


耶馬溪の風景の中でもひときわ存在感のある「耶馬溪橋」。地元の石材を使い、複数のアーチを連ねてつくる独特の構造が特徴で、全国でも数の少ない“石造アーチ橋”として知られている近くで見ると石が丁寧に積み上げられていて、当時の技術の高さがそのまま形になって残っていることに驚く。車で渡るだけでは気づきにくいけれど、少し離れた場所から眺めると、山並みとアーチがきれいに重なり、谷全体がひとつの絵のように見える。
耶馬溪橋
・住所:大分県中津市本耶馬渓町曽木
・営業時間:終日
・料金:無料
・情報:http://city-nakatsu.jp/doc/2013080200183/



橋を眺めたあとは、看板が目に入り、すぐ近くの「農家レストラン 洞門パティオ」へ。店内には地元で採れた野菜や加工品がずらりと並び、この谷で暮らす人たちの食卓がそのまま切り取られたような温かさがある。
野菜の直売所と食事処がひとつになった場所で、次はぜひランチも食べてみたい。
農家レストラン 洞門パティオ
・住所:大分県中津市本耶馬渓町樋田180
・営業時間:11:00~16:00
・情報:http://do-patio.com/
8.「金色温泉」で大露天風呂を満喫



八面山の麓に湧く温泉で、広い露天風呂からは山の稜線がほのかに見える。湯はとろりとした肌ざわりで、冬の冷たい空気にちょうどいい。岩風呂や、庭をめぐる小道があり、お湯に浸かるだけでなく景色の中に身を置くという贅沢さのある温泉。ライトアップされた庭が静かに浮かび上がり、今日見た景色をゆっくり思い返しながら過ごす締めくくりの時間になった。
粟嶋公園
・住所:大分県中津市三光田口金色584-1
・営業時間:10:00〜24:00(貸切湯は22:00まで)
・料金:大浴場 大人700円/小学生350円 |貸切露天風呂2,500円(平日60分・土日祝日45分)
・情報:https://www.kanairo.co.jp/index.html
9.夜の耶馬トピアへ




温泉をあとにして向かったのは、谷の入口にある「耶馬トピア」。夜は人も少なく、静かに休んでいる旅の車にもちらほら出会う。広い駐車場の片隅には、地元の蕎麦を使った商品が並ぶ自販機がぽつんと灯っていて、その明かりが夜の山の静けさの中で小さく浮かび上がっていた。広い駐車場に車を停めて外の空気を吸うと、さっきまでまとっていた湯気がすっと引いていくようで、山の夜の冷たさが心地よく感じられた。
耶馬トピア
・住所:大分県中津市本耶馬渓町大字曽木2193-1
・営業時間:10:00~16:30
・休館日:木曜日
・情報:https://www.doumonsoba.com/
10.朝の耶馬溪




夜が明けて、山の向こうからゆっくり光が差し始めるころ、耶馬トピアの駐車場はまだ静かで、澄んだ空気の中に山の稜線だけがくっきりと浮かんでいた。耶馬溪風物館に入ると、ガラス越しの朝のひかりが展示パネルに反射してきれいだった。スタッフの方が声をかけてくれて、この谷の成り立ちや季節の見どころ、車でめぐりやすいルートまで丁寧に教えてくれた。旅の途中でこうして土地の話を聞けると、地図だけでは拾えない景色や寄り道に出会える。次に来るときは、まずここで相談して旅程を考えようと思った。
耶馬溪風物館
・住所:大分県中津市本耶馬渓町大字曽木2193-1
・営業時間:9:00~17:00
・入館料:無料
・休館日:年末年始
・情報:https://www.city-nakatsu.jp/doc/2015032000841/
11.冬のバンライフのすすめ


VANLIFE RENTAL CARで走る冬の耶馬溪は、景色も空気も、そして朝のひかりも、どれも少しだけ特別に感じられた
冬の旅はたしかに寒い。でもそのぶん、澄んだ空気の中で山の輪郭がくっきり浮かび、静けさの中にある豊かさに気づける。
あたたかい毛布にくるまって目を覚ます瞬間や、窓の外に広がる朝の光をゆっくり眺める時間。そんな小さな“特別”が積み重なるのが、冬のバンライフの良さだと思う。帰り道、昨日走った谷の景色が、朝の空気の中でまた違う色に見えた。暖かくなったら、またこの道を走りに来よう。
■今回の旅先
もみじの湯 → 豆岳珈琲 → 若鶏からあげ くりちゃん → 青の洞門 → 旧平田郵便局 → 農家レストラン 洞門パティオ → 渓石園 → 耶馬溪橋(オランダ橋) → 金色温泉 → 耶馬トピア(耶馬溪風物館)
日程:1泊2日
走行距離:約120km

【著者:みく】
VANLIFE RENTALCARのスタッフ。福岡から大分へ移住し、自然に囲まれた暮らしを送りながら、アートや旅を楽しんでいる。バンライフならではの自由な時間や出会いを表現の源に、仕事と日常を行き来しながら、旅の楽しさと暮らしの豊かさを伝えている。




