2500万年の地球が削り出した、日本海屈指のジオ・サイト。
京都から兵庫、鳥取へと続く約75kmの海岸線。山陰海岸国立公園は、まるで“海岸地形の博物館”のような場所だ。荒波に削られた断崖。神秘的な洞門が連なるリアス海岸。そして、風が描く砂の芸術・鳥取砂丘。
この一帯はユネスコ世界ジオパークにも認定されている。けれどここは、単なる景勝地ではない。火山の力が生んだ城崎や湯村の名湯。複雑な入り江が育む豊かな海の幸。自然を敬い、共に生きる人々の暮らし。地球の鼓動と文化の香りが溶け合う、日本でも唯一無二のダイナミズムがここにはある。
基本情報
指定:1963年(昭和38年)
面積:約8,783ha
エリア:京都府・兵庫県・鳥取県
認定:山陰海岸ジオパーク(ユネスコ世界ジオパーク)
撮影時期:2025年12月下旬
撮影時間帯:昼前頃 〜 日没
目次
1. それぞれの時間が流れる場所2. 風が削り、波が刻んだ海岸線
3. 地球の記憶に触れる、玄武洞
4. コウノトリと共に生きる土地
5.「陰」の時間
1. それぞれの時間が流れる場所
鳥取から兵庫、そして京都まで。
日本海沿いを辿るこの国立公園では、老若男女問わず、それぞれの時間の過ごし方ができる。
観光名所として知られる鳥取砂丘。駐車場近くで穏やかに景色を眺める老夫婦。
強風に煽られながら砂丘を登る家族。カメラを構え、光を待つ人。
同じ場所にいながら、まったく違う時間が流れている。この日の夕焼けは、特に美しかった。日没後もしばらく空は色を変え続け、静かな余韻を残していった。



2. 風が削り、波が刻んだ海岸線
砂丘で砂まみれになったあと、海へ向かう。長い年月をかけて形成された海岸線。
山と海のあいだに、馴染むように築かれてきた街。松が生える巨大な岩を囲うように形成された漁港。並ぶ軽トラと漁船。
自然のすぐそばに、人の暮らしと文化がある。それは、日本の国立公園の魅力そのものだった。



3. 地球の記憶に触れる、玄武洞
城崎温泉近くにある玄武洞。
火山活動によって生まれた、六角形の柱状節理が壁面を覆うその姿は、圧倒的な造形美を放っている。
ガイドの声が聞こえた。
「ここは、地球磁場の逆転を解明するきっかけになった場所です。」
その時は半信半疑だった。けれど後日、撮影データを確認すると、なぜか多くの写真が上下反転していた。直接的な関係は分からない。けれど、磁場の反転という地球規模の現象と、不思議な写真の出来事。この場所は、ただの観光地ではなく、“地球の時間”を感じる場所として記憶に残った。



4. コウノトリと共に生きる土地
山陰海岸といえば、コウノトリ。兵庫県立コウノトリの郷公園では、その歴史や絶滅からの復活、現在の共生への取り組みを学ぶことができる。かつて誤解され、一度は絶滅に至ったコウノトリ。今は人の目で見守られながら、再びこの土地で生きている。人工巣塔へ降り立つ二羽の姿を見たとき、静かな感動が込み上げた。田んぼや電信柱に立つその姿は、この土地と人の関係を象徴しているようだった。


5.「陰」の時間
小雨が降る海沿いで車を停めていると、地元の方がこう教えてくれた。「山陰の“陰”は地名だけじゃない。曇りや雨が多い、この土地の空気をよく表している言葉なんだよ。」
雲に覆われ、雨に打たれる静かな時間。けれど夏になれば、海水浴客やサーファーで賑わい、まるで“陽”のような表情を見せるという。同じ場所でも、季節と天候でまったく違う顔を持つ。また、違う表情の山陰海岸に会いに行きたいと思う。




National Park Photographer/Videographer
Ryuhei Hata | 秦 竜平
学生時代に旅したアメリカの国立公園での経験が、自然を記録する原点となる。現在は、雄大な自然の中で人が暮らし、文化が育まれてきた日本の国立公園に魅力を感じ、その風景を写真・映像で記録している。



