寒さが増してくると、遠くへ向かうよりも、まずは近くを走りたくなる。それは距離を欲張らずに、ひとつひとつの時間を味わいたくなるからかもしれない。VANLIFEという言葉からは、長距離を走ったり、特別な景色を目指したりする旅を想像するひともいるかもしれない。でも、山をひとつ抜けて谷に下り、距離を気にせず、途中で立ち止まりながら進む時間も、バンライフカーだからこその、旅のかたちのひとつだと思う。
今回は、バンライフレンタカーでめぐる山香周辺。自然豊かな景色に恵まれ、山と川に囲まれたこの場所を起点に、温泉に寄り、山を抜け、景色の中を歩く。まずは周辺を散策するように過ごす一日が、その先へ向かう旅の、静かな準備になる。そこから遠くへ向かう旅の、はじまりの一日としても、ひとつのヒントになればうれしい。




明治時代に架けられた石橋。川をまたぐ二つのアーチと、石を積み上げた素朴な佇まいが、観光地として手入れされすぎておらず、この場所で積み重ねられてきた時間を、そのまま残している。橋のまわりには桜の木が多く植えられていて、冬の景色の中に、ひとつだけ咲いた桜の花が目に留まった。春になれば、この橋のまわりはきっと、まったく違う表情を見せるのだろう。今はまだ落ち着いた冬の色合いの中で、人の営みと、これから訪れる季節の気配が、静かに重なっている。
赤松橋(赤松めがね橋)
・住所:大分県速見郡日出町藤原
・情報:http://hijinavi.com/





古くから生活用水として使われてきた湧水。今も地域の人たちの暮らしを支える水として、大切に守られている。季節によって色づく草花や、苔むした石。水を汲むという行為が、ここでは特別なことではなく、日常の延長として存在している。VANLIFEの旅にとっては、給水スポットでありながら、この土地の暮らしに触れる入口のような場所でもある。
水の口湧水・水の口湧水公園
・住所:杵築市山香町大字南畑4129番地42外
・情報:https://www.city.kitsuki.lg.jp/soshiki/1/kensetu/kouen/1964.html
3.山香の日常に溶け込む、うどん山ちゃん





山香の飲食店として親しまれているうどん屋。メニューの種類も多く、座敷があるので子ども連れでも利用しやすい。出汁のやさしい味が体に染みて、冬の外食にはぴったり。写真に写っているのは「おまかせ定食」。個人的にはいなりがとてもおすすめ。GORDON MILLER YAMAGAから、車で5分という立地も嬉しいポイント。
うどん山ちゃん
・住所:大分県杵築市山香町大字広瀬497
・営業時間:11:00-14:00
・定休日:金曜日
4.静かに背筋が伸びる、八旗八幡神社




走っている途中、ふと目に入り立ち寄った神社。正月の装いが残り、境内は静かに整えられていた。古くから地域の守り神として親しまれてきた神社で、境内の手入れの行き届いた様子からも、今も地元の人たちに大切にされている場所だということが伝わってくる。雨乞い神社とも呼ばれているそうだ。旅の途中で、自然と背筋が伸びる時間だった。
八旗八幡神社
・住所:大分県杵築市山香町野原2254
・情報:https://www.visit-oita.jp/spots/detail/5814
5.暮らしの中の聖域、山蔵のイチイガシ





民家の間を抜けた先、「こんなところに?」と思う場所に、大きく聳え立つイチイガシが現れる。看板が立っているので、それを目印に進むと迷うことなく辿り着ける。樹齢は千年を超えるといわれ、地域では信仰の対象として大切にされてきた木。観光地として整えられていない分、この場所が、暮らしの中にある聖域だったことが、より強く伝わってくる。

別名「神塩温泉」といい、地元の人に「塩湯」と呼ばれる温泉。ミネラル分を多く含んだ泉質が特徴で、体の芯から温まる。アメニティはなく、タオルやシャンプー類は持参が必要。気さくに話しかけてくれる方が多く、人のあたたかさも感じられる。わかりやすい看板などはないので、通り過ぎないように注意が必要。どこへ出かけても、結局ここに戻ってきてしまう。そう思わせる力のある、山香の名所とも言える温泉。
山香温泉センター
・住所:大分県杵築市山香町野原
・営業時間:14:00〜20:00
・休館日:月・木曜
・料金:市外利用 440円
7.夜に立ち寄りたい、喫茶oluolu





こちらも山香のお店から5分程度で行ける喫茶店。ごはんものからパスタにラーメン、唐揚げ、パンケーキまで、喫茶店らしいメニューと定食の両方が揃う。店主のやさしさが、料理や空間の隅々ににじんでいて、船底のようなアーチを描く天井が、どこか懐かしい落ち着きをつくっている。
oluolu
・住所:大分県杵築市山香町大字野原1798
・営業時間:12:00〜18:00
・定休日:日曜日
・情報:https://www.instagram.com/olu.olu.cafe.hairsalon/
8.近場から始まるバンライフ

走り終えてから振り返ると、今回の一日は、特別な出来事があったわけではない。それでも、湧水の冷たさや、温泉の湯気、静かな橋の上で立ち止まった時間は心に残るものだった。遠くへ行かなくても、近くを走るだけで、見落としていた景色や時間に出会えることがある。バンライフは、必ずしも特別な場所を目指す旅じゃなくていい。まずは、暮らしている場所の延長から。その一歩が、次の旅へつながっていく。この日の記録が、これから走り出す誰かの、静かなきっかけになればうれしい。
■今回の旅先
赤松橋 → 水の口湧水・水の口湧水公園 → うどん山ちゃん → 八旗八幡神社 → 山蔵のイチイガシ → 山香温泉センター → 喫茶 oluolu
日程:日帰り(5時間程度)
走行距離:約20km前後

【著者:みく】
VANLIFE RENTAL CARのスタッフ。福岡から大分へ移住し、自然に囲まれた暮らしを送りながら、アートや旅を楽しんでいる。バンライフならではの自由な時間や出会いを表現の源に、仕事と日常を行き来しながら、旅の楽しさと暮らしの豊かさを伝えている。






